ピロリ菌外来
ピロリ菌感染の有無を確かめる検査と、陽性だった場合の除菌治療を行う専門外来です。除菌治療は一定の条件を満たした場合、2回まで健康保険適用で治療が受けられます。ピロリ菌に感染している場合、胃がんの発症リスクが高いとされていますので、胃がん発症リスクが高くなる40歳を超えたら1度検査を受けることをおすすめしています。特に、胃の症状がある方、胃がんや胃潰瘍を発症したご家族がいる方は、早めにご相談ください。
ピロリ菌とは
正式な名称は「ヘリコバクター・ピロリ菌」で、1982年にオーストラリアで発見された細菌です。胃酸や免疫がまだ弱い幼少期に感染して、胃に住み着いて慢性的な炎症を起こします。
はっきりとした感染経路はわかっていないのですが、汚染された井戸水などを介した経口感染が主な経路と考えられていて、衛生環境が悪い地域の感染率が高くなっています。
日本でも若い世代の感染率は低下していますが、65歳以上の感染者数はまだかなり多いとされています。感染すると慢性的な粘膜の炎症を起こして、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因になります。また、胃がん発症のリスクが高くなることもわかっています。
慢性的な胃炎のある方、胃潰瘍・十二指腸潰瘍になったことがある方、ピロリ菌感染・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんの家族歴がある方は、ピロリ菌感染の有無を調べる検査を受けるようおすすめしています。
ピロリ菌感染が気になる方・検査を受けようか迷っている方のために、当院では感染の可能性がすぐにわかるチェックシートをお渡ししていますので、お気軽にご利用ください。
ピロリ菌検査
ピロリ菌感染の有無を調べる場合、内視鏡検査の際に組織を採取して行う検査と、使用しない検査があります。
内視鏡検査時に組織を採取して行う検査
- 迅速ウレアーゼ試験
- 鏡検法
- 培養法
内視鏡を使用しない検査
- 抗体測定
- 糞便中抗原測定
- 尿素呼気試験
当院では内視鏡検査を行って粘膜の状態を直接、詳細に調べた上で、感染の有無について評価し、感染の可能性が高い場合は上記検査を追加して確認いたします。
ピロリ菌外来の診療
ピロリ菌検査で陽性という確定診断が得られた場合、条件を満たせば健康保険適用による除菌治療を2回まで受けられます。胃・十二指腸潰瘍と診断された場合に加え、慢性胃炎と診断された方の除菌治療も健康保険が適用されます。
ピロリ菌除菌の成功率
強力な胃酸分泌抑制薬(P-CAB)が登場したことにより除菌成功率は約90%とほとんどの方が成功するようになりましたが、まだ100%ではありません。治療後適切な時期に再判定を行うことが重要です。また、自費診療になりますが3回目以降の除菌治療も可能です。
除菌治療の流れ
1診断
内視鏡検査を行って組織を採取し、ピロリ菌感染の有無を確認します。
陽性の場合
健康保険による除菌治療を行います。
陰性の場合
除菌治療は必要ありません。症状がある場合は状態に合わせた治療を行いますが、特に問題がない場合には診療終了となります。
21回目の除菌治療
ピロリ菌を除菌するために、2種類の抗生剤とその効果を高める胃酸分泌抑制薬を1日2回、1週間服用します。
3除菌判定
ピロリ菌の有無を調べる検査を再度行って、治療によってピロリ菌が除菌されたどうかを確認します。
なお判定は、服用から一定期間経過しないと正確な結果が得られません。
陽性の場合
健康保険による2回目の除菌治療を行います。
陰性の場合
除菌が成功したため、除菌治療は終了です。ただし、ピロリ菌に感染したことがある場合、感染したことがない方に比べると除菌に成功しても胃がんの発生リスクが高い状態です。有効な早期発見と治療のために、毎年1回の定期的な胃カメラ検査をおすすめしています。
42回目の除菌治療
1回目の除菌治療の抗生剤1種類を別の薬に変え、1日2回、1週間の服薬による除菌治療を行います。
5除菌の判定
服薬から一定期間経過してから、ピロリ菌が除菌されたどうかを確認します。
陽性の場合
自費になりますが、3回目の除菌治療も可能です。
陰性の場合
除菌が成功したため、除菌治療は終了ですが、ピロリ菌に感染したことがある場合、感染したことがない方に比べると除菌に成功しても胃がんの発生リスクが高い状態です。有効な早期発見と治療のために、毎年1回、定期的な胃カメラ検査を受けるようおすすめしています。
保険診療の治療対象者
- 内視鏡検査または造影検査において胃潰瘍または十二指腸潰瘍の確定診断がなされた方
- 胃MALTリンパ腫の方
- 特発性血小板減少性紫斑病の方
- 早期胃がんに対する内視鏡的治療後の方
- 内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた方
また、内視鏡検査で胃炎の診断がされた場合も、健康保険適用による感染検査や除菌治療が可能です。
また、半年以内に当院以外で胃カメラ検査を受けていて胃炎を指摘されている場合も、当院での除菌治療が保険適用で受けられます。また、胃炎を指摘された内視鏡検査でピロリ菌感染も確定診断されている場合、すぐに除菌治療を保険適用で開始できます。
上記のような条件に合わない場合は、感染診断から除菌治療が自費診療になります。
詳細な内容をきちんとご説明していますので、わからないことがありましたらお気軽にお問い合わせください。
文責:金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院
院長 中村文保