症状
ポリープがあっても自覚症状を起こすケースはかなり限られています。硬い便が通る場所にポリープができて、便が通り過ぎる際にポリープに擦れて出血し、便潜血検査陽性や血便を生じて発見されることがあります。ただし、まだやわらかい便が通過する場所にポリープができたり、小さく平坦だったりする場合には出血することがないため、便潜血検査は陰性になります。大腸ポリープがかなり巨大化すると便の通過を妨げて便秘や下痢、腹痛などを起こすことがあります。
大腸カメラは微小な大腸ポリープ発見できる唯一の検査
大腸カメラ検査は、大腸全域の粘膜をすみずみまで観察できますし、当院では最新の内視鏡システムを導入して特殊なレーザー光や画像処理、拡大などによるに高度な観察が可能です。一般的な検査では発見が難しい微細な病変も短時間に発見でき、精度の高い検査をおこなっています。
発見された大腸ポリープは、その場で切除する日帰り手術を行うことで治療も終了します。なお、切除したポリープは回収して病理検査を行って確定診断しています。
生活の質(QOL)を守るための早期発見・早期治療
大腸がんは早期発見と適切な治療で予防や根治が望める病気ですが、大腸がんよる死亡率は増加傾向にあります。これは、大腸がんの自覚症状が乏しく、進行してから発見されることが多いことが大きな原因になっていると考えられます。進行した大腸がんの場合、命が助かっても大変な治療が必要になり、お仕事や生活自体に支障が出てしまうケースも珍しくありません。
早期の大腸がんや前がん病変の大腸ポリープは大腸カメラ検査でなければ発見できませんので、自覚症状のない段階で大腸カメラ検査を受けることが重要です。大腸カメラ検査では、前がん病変の大腸ポリープをその場で切除できますので、将来の大腸がん予防が可能です。生活の質(QOLクオリティ・オブ・ライフ)を守るためには症状のない状態で定期的に受ける大腸カメラ検査が有効です。大腸がん発症のリスクは年齢が上がると上昇し、前がん病変の大腸ポリープから時間をかけて生じるため、40歳を超えたら症状がなくても大腸カメラ検査を1度受けることをおすすめしています。
大腸ポリープ切除のメリットと手法
大腸カメラ検査は、粘膜の状態をすみずみまで直接観察できるため、他の検査では発見できない微小な大腸がんをはじめとしたさまざまな大腸疾患特有の病変を発見するために役立ちます。また、検査中に発見した大腸ポリープをその場で切除する日帰り手術が可能ですから、別日に改めて手術を受ける必要がなく、事前の食事制限や下剤服用も1度だけで、入院も必要ありません。ポリープの切除によって将来の大腸がんが予防できるため、検査と治療、予防が1回で完了します。
ただし、まれですが、数が多い、サイズが大きい、形状に問題があるなどで入院による手術が必要な場合もあります。その際には連携している高度医療機関をご紹介して、適切な治療をできるだけ早く受けていただけるようにしています。
大腸ポリープ切除の手法
ポリペクトミー
大腸ポリープ切除では最も多く行われている手法ですが、術後の合併症を起こす可能性があるため、当院では安全性が確保されている場合にのみ行っています。
内視鏡スコープ先端からワイヤー状のスネアを出して大腸ポリープにかけ、締め付けてから高周波電流を流して焼き切る手法です。高周波電流に電気メスのような効果があって切除時の出血を抑制しますが、熱が下層まで伝わってしまうと術後に出血や穿孔といった副作用を起こす可能性があるため注意が必要です。
コールドポリペクトミー
ポリペクトミーとほぼ同じ手法ですが、高周波電流を流さず、スネアで締め付けて切除します。熱ダメージを与えることがないため、術後の合併症を起こすリスクを低減できます。切除の際に出血が懸念される場合には止血処置を行います。
内視鏡的粘膜切除術
隆起していない大腸ポリープにはスネアがかからないため、生理食塩水を注入して持ち上げてから切除する内視鏡的粘膜切除術による切除を行います。下に生理食塩水があって下層まで熱が伝わる心配がないので、スネアに高周波電流を流して切除します。
切除後の注意点
切除は手術ですから、出血といった合併症が起こる可能性があります。合併症を予防して、できるだけ早い回復のために、術後の制限がいくつかあります。長距離移動、食事、運動、入浴などに関する制限で、個人差はありますが数日から1週間程度制限を守っていただきます。
検査スケジュールを決める際には、検査中にポリープを切除する可能性があることを考慮して、術後1週間程度は旅行や出張などがない時期にご予約いただくようにしています。
下記は目安の制限です。個人差があるため、実際に医師から指示された内容をお守りください。
ご帰宅後の過ごし方
当日は安静を保ち、早めにご就寝ください。
入浴
軽くシャワーを浴びる程度でしたら当日も可能です。入浴は翌日から可能になりますが、しばらくは長湯を控える必要があります。
食事
当日は、油分の多いもの、刺激が強い香辛料など腸に負担がかかるものを控えてください。
飲酒
術後の診察で医師の許可が出るまでは禁酒です。
運動
腹圧がかかる運動は1週間程度控えます。軽い散歩程度以外はほとんど禁止とお考えください。体質や年齢、運動内容、ポジションなどによっても変わりますので、医師に相談して再開の時期を決めてください。
旅行・出張
長距離移動や長時間の運転は、腸への負担が大きいため、術後1週間は禁止されます。飛行機は気圧が大きく変化するため、短時間でも避けてください。また、遠方では万が一の場合に適切な処置が遅れる可能性もありますので、術後1週間は旅行や出張のスケジュールがない時期に検査を受けるように調整してください。
文責:金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院
院長 中村文保