肝臓内科

肝臓内科

当院の肝臓内科では、肝臓・胆のう・膵臓の専門的な診療を行っています。肝臓自体には感覚神経がないので痛みを感じにくいことや、かなり悪化した状態ではじめて肝臓特有の自覚症状を認めることから、沈黙の臓器と呼ばれています。進行するまで気付かないことが多いため、健康診断で肝機能異常を指摘された場合や、疲れやすい・倦怠感がある・だるいといった不調に気付いた場合には、できるだけ早く肝臓内科を受診してください。
問診で症状や不調の内容、現れはじめた時期などについてくわしくうかがいます。これまでかかった病気、飲んでいるお薬、手術や輸血を受けた経験の有無、家族歴などについてご質問します。
当院では、ウイルス性肝炎治療などの幅広い治療を行っています。また高度な検査や治療が必要な場合には連携している大学病院などをご紹介して、適切な医療を受けていただけるようにしています。

肝臓内科で診療する主な疾患

ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎には、A型、B型、C型、D型、E型という5タイプのウイルスがあって、さらにまだ特定されていないウイルスもあると考えられています。またEBウイルスやサイトメガロウイルスなど、感染に伴う一症状として肝障害を来すウイルスもあります。急性肝炎は、こうしたウイルス性肝炎に感染して、急性の肝機能障害を起こしている状態です。主な症状には、黄疸、食欲不振、吐き気、嘔吐、倦怠感、発熱などがあり、ほとんどのケースでは適切な治療で改善が可能です。ただし、短期間に進行してしまう劇症化を起こすと命に危険が及び、肝移植が必要になることもあります。

B型慢性肝炎

B型肝炎ウイルス(HBV)に持続感染している状態です。感染の原因には、輸血や母子感染、性的接触などがあります。生後早期に感染すると持続感染を起こしやすいとされています。持続感染している方のうち、10~20%が慢性肝炎へ移行します。進行すると肝硬変による腹水や黄疸、肝性脳症を発症したり、発癌のリスクが上昇するなど深刻な状態になります。また急激に悪化する急性憎悪や劇症化を起こして命に危険が及ぶ場合もあります。肝臓の数値が高く慢性肝炎が進行する可能性がある方、肝機能は落ち着いていても抗がん剤や免疫抑制剤の投与などにより急激に悪化する可能性がある方は、適切な治療と定期的な検査を受けることが必要です。

C型慢性肝炎

C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって起こります。以前は輸血や血液製剤、注射針の使い回しによる感染が多かったのですが、現在はタトゥー・ピアス・鍼治療などによる器具の使い回しによって感染するケースがほとんどを占めます。
感染すると急性肝炎になることもまれにありますがほとんどの方は急性肝炎を起こさず感染に気付くこともありません。また急性肝炎になっても倦怠感や吐き気といった不調程度の自覚症状しか現れないことが多いです。感染した方のうち7割の方が持続感染を起こし、慢性肝炎を発症します。慢性肝炎になると、肝硬変や肝臓がんリスクが上昇するため適切な治療と定期的な検査を受けることが重要です。

自己免疫性肝炎

免疫の異常によって肝臓に障害を起こす自己免疫性の疾患で、難病に指定されています。症状は比較的軽い傾向がありますが、進行して肝硬変を起こすこともあります。また他の自己免疫性疾患(甲状腺炎、関節リウマチ、シェーグレン症候群など)を伴うこともあります。治療はステロイドの内服ですが、治療を中断するといったん落ち着いていた炎症が再発することが多く、病気の進行を防ぐためにも治療の継続が重要です。

原発性胆汁性胆管炎(原発性胆汁性肝硬変)

肝臓は栄養代謝や解毒、そして胆汁を作る機能も持っています。肝細胞が生成した胆汁は総肝管から胆のうに送られて濃縮され、十二指腸に排出されます。原発性胆汁性胆管炎は、肝臓内にある細い胆管が破壊され、胆汁がうっ滞する疾患です。自己免疫疾患で、原因がまだはっきりとわかっていないため難病指定されています。進行すると肝硬変や肝不全を起こします。以前は進行してから発見されるケースが多かったので原発性胆汁性肝硬変と呼ばれていました。多くの自己免疫疾患と同様に、中年以降の女性が発症することが多くなっています。病期・病態に応じた治療が重要であり、できるだけ早期に発見して適切な治療によって進行させないことが重要です。

アルコール性肝障害

長年に渡るアルコールの過剰摂取が原因で生じる肝障害の総称です。アルコールの過剰摂取とは一般的には1日に純エタノールに換算して60g以上の飲酒(ビール中瓶だと3本以上、日本酒だと3合以上、焼酎だと1.8合以上)を指します。まずはアルコール性脂肪肝を発症し、急性の障害であるアルコール性肝炎を発症すると重症化し、エンドトキシン血症、肝性脳症、肺炎、急性腎不全、消化管出血、多臓器不全などを起こす可能性があり、命に危険が及びます。また長期の多量飲酒の継続により肝の線維化を来し、アルコール性肝硬変、肝癌に至る可能性があります。
アルコール性肝障害は男性に多いイメージがありますが、女性は男性よりも少量・短期間の飲酒で発症する可能性があるとされています。また、ウイルス性肝炎がもともとある場合には、肝硬変や肝がんの発症リスクも上昇します。

薬剤性肝障害

薬によって肝障害を起こしている状態です。病気の治療のための薬剤や健康のためのサプリメントでも薬剤性肝障害を起こすことがあります。肝臓は毒物を分解して排出する役割を担っているため、薬剤もほとんどは肝臓で代謝されます。こうしたことから肝臓は薬剤の影響を受けやすく、予測できない障害を起こすこともあります。劇症化して肝不全から死に至る可能性もありますので、薬を服用して異変を感じたらすぐに受診することが重要です。


文責:金沢消化器内科・内視鏡クリニック 野々市中央院 
院長 中村文保

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